外国人介護士を雇用するには?採用できる在留資格や雇用の問題点についても解説

外国人介護士を雇用する際は、受け入れられる在留資格について確認する必要があります。本記事では、採用できる在留資格から雇用するメリット、雇用する際の問題点についても解説。外国人介護士の雇用を検討している事業者の方は、参考にしてみてください。

目次

外国人介護士の雇用の現状

公益財団法人介護労働安定センターが発表する「令和四4年度 介護労働実態調査結果」(※)によると、外国籍労働者の受け入れ状況は次の通りです。

介護施設においては、技能実習生が最も受け入れられており、次いで特定技能1号が多くなっています。また。外国人介護士を受け入れていない施設は、83.9%と多いことがわかります。

※”公益財団法人介護労働安定センター 公式HP”参照

外国人介護士として採用できる在留資格

外国人介護士として採用できる在留資格は、次の4つです。

・EPA(経済連携協定)
・在留資格「介護」
・技能実習
・特定技能1号

外国人介護士として採用できる在留資格別の概要は次の通りです。在留資格によって、在留可能年数や就労できる介護サービスが異なります。外国人介護士を雇用する際は、在留資格をよく確認しましょう。

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在留資格EPA(経済連携協定)在留資格「介護」技能実習特定技能1号
目的経済連携就労技術移転就労
在留者数(※1)3,257人5,339人15,011人17,066人
在留可能年数4年(※資格の取得後は永続的に就労可能)制限なし5年(※2)5年(※2)
日本語能力N3程度(就労開始時点)N2程度(入学要件)N4程度(入国要件)日常会話や業務で必要な日本語能力が必要
必要な資格なし(※資格の取得を目的とする)介護福祉士なし(※実務要件等を満たすと受験可能)なし(※実務要件等を満たすと受験可能)
就労可能なサービス種別制限あり(介護福祉士資格の取得後は、一定条件を満たした施設訪問系も可能)制限なし制限あり(訪問系は不可)制限あり(訪問系は不可)

※”厚生労働省 公式HP”参照

※1:”厚生労働省 公式HP”参照

※2:介護福祉士を取得すると、在留資格「介護」を選択できるため、永続的な就労が可能となる。また、3年目まで修了した技能実習生は「特定技能1号」に必要な試験が免除されるため、技能実習と特定技能で最長10年就労可能となる。

EPA(経済連携協定)

EPA(Economic Partnership Agreement)は、関税の削減や撤廃、投資や貿易の自由化、知的財産の保護などを通じて、経済連携の強化を目的とする2カ国または多国間で結ばれる条約です。

日本では、インドネシア、フィリピン、ベトナムとの間で締結された協定に基づき、この協定の一環として各国からの介護福祉士候補者を受け入れています。この制度の目的は、経済活動を通じて国同士で連携の強化を図ることであり、人手不足を解消するための措置ではありません。

EPAに基づいた介護福祉士候補者の在留期間は4年間で、採用にはJICWELS(公益社団法人国際厚生事業団)への登録が必要です。登録後は候補者と面接を行うことで採用が可能ですが、日本語の研修があるため就労までに時間がかかります。

EPAに基づいた介護福祉士候補者を雇用するメリットは、母国で看護学校を卒業し、政府による介護士認定を受けた人材であるため、技能実習生よりもスキルが高いことです

※”厚生労働省 公式HP”参照

EPAの受け入れの流れ

EPAでは、国によって受け入れの流れが異なります。ここでは、国別の受け入れ要件と就労までの流れを解説します。

インドネシアの場合

要件
「高等教育機関(3年以上)卒業+インドネシア政府による介護士認定」または「インドネシアの看護学校(3年以上)卒業」

流れ
1. マッチング(面接)
2. 訪日前日本語研修(6か月)(※1)
3. 日本語能力試験 N4程度以上合格(令和4年度~)
4. 介護福祉士候補者として入国
5. 訪日後日本語等研修(6か月)(※1)
6. 就労

フィリピンの場合

要件
「4年制大学卒業+フィリピン政府による介護士認定」または「フィリピンの看護学校(学士)(4年)卒業」

流れ
1. マッチング(面接)
2. 訪日前日本語研修(6か月)(※1)
3. 日本語能力試験 N5以上合格(平成28年度~)
4. 介護福祉士候補者として入国
5. 訪日後日本語等研修(6か月)(※1)
6. 就労

ベトナムの場合

要件
3年制または4年制の看護課程修了

流れ
1. 訪日前日本語研修(12か月)(※1)
2. 日本語能力試験 N3以上合格
3. マッチング(面接)
4. 介護福祉士候補者として入国
5. 訪日後日本語等研修(2.5か月)
6. 就労

※”厚生労働省 公式HP”参照

※1:日本語能力試験においてN2以上の候補者は(※1)の日本語研修が免除される。また、一定期間内で日本語能力試験N3もしくはN4を取得した候補者は日本語研修が免除される。

EPAの受け入れ実績

EPAでは、どの国の人材も介護だけでなく看護に関する知識も有しています。その分、介護福祉士候補者の受け入れ人数は少なく、需要が高いため受け入れのハードルが高いのが現状です。

インドネシア
開始時期:平成20年度
受け入れ人数:296人(令和5年度)
累計受け入れ人数:3,196人(平成20年度から令和5年度までの累計)

フィリピン
開始時期:平成21年度
受け入れ人数:215人(令和5年度)
累計受け入れ人数:2,895人(平成21年度から令和5年度までの累計)

ベトナム
開始時期:平成26年度
受け入れ人数:127人(令和5年度)
累計受け入れ人数:1,584人(平成26年度から令和5年度までの累計)

※”厚生労働省 公式HP”参照

在留資格「介護」

在留資格「介護」は、日本に外国人留学生や技能実習生として入国し、日本の介護福祉士養成施設を卒業後、介護福祉士国家資格を取得することで業務に従事できる資格です。

高齢化の進行にともない質の高い介護が必要とされていることに加え、これまでは介護福祉士養成施設を卒業した留学生が介護福祉士の資格を取得しても介護業務に就くことができませんでした。これより、平成29年から在留資格「介護」が施行され、介護福祉士の資格を持っている外国人が介護に関する業務に従事できるようになりました。

在留資格「介護」では、在留期間更新の制限がないため、長く就労できることがメリット。また、介護福祉士国家資格の試験は全て日本語で行われるため、日本語の能力が高い外国人が多いこともメリットとして挙げられます。

※”厚生労働省 公式HP”参照

在留資格「介護」の受け入れの流れ

在留資格「介護」の受け入れの仕組みは、養成施設ルートと実務経験ルートの2種類があります。以下が就労までの詳しい流れです。

養成施設ルート

1. 在留資格「留学」として入国
2. 介護福祉士養成施設(2年以上)
3. 介護福祉士資格取得(登録)
4. 就労

実務経験ルート(令和2年4月1日施行)

1. 在留資格「特定技能1号」等(※1)として入国
2. 介護施設等で就労・研修(※1)(3年以上)
3. 介護福祉士資格取得(登録)
4. 就労

※”厚生労働省 公式HP”参照

※1:その他の在留資格(EPA介護候補者など)で滞在中に介護福祉士試験に合格した場合においても、在留資格「介護」へ移行が可能

技能実習

技能実習制度とは、日本の先進国としての役割を果たしながら国際社会との調和のある発展を図るために、技能や技術の知識を開発途上国への移転を図り、経済発展を担うことに協力することを目的としているものです。

介護施設等の実習実施者のもとで実習を行った後に、試験を受けなければいけません。技能実習は他の在留資格と比較して、在留者数が多く、受け入れがしやすい制度です。

※”厚生労働省 公式HP”参照

技能実習の受け入れの流れ

技能実習は、入国から1、3、5年後に実技試験の受検が必要なことが特徴です。技能実習生の受け入れの流れは次の通りです。

1. 実習実施者(介護施設等)の下で実習(最大5年間)(※1)
2. 受検(入国1年後)
3. 受検(入国3年後)
4. 受検(入国5年後)
5. 帰国

※”厚生労働省 公式HP”参照

※1:実習の各段階で技能評価試験を受検

特定技能1号

特定技能制度は、中小規模の事業者の人手不足が深刻化しており、経済や社会基盤に対する持続可能性が阻害される可能性が考えられることが背景となっています。背景により、生産性の向上や、日本国内の人材確保の取り組みを行なっても人手不足である産業において、一定の専門性や技能を有した外国人材を受け入れる仕組みが創設されました。

特定技能制度には、2種類の在留資格があります。特定技能1号は、知識や経験を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。介護をはじめとする、宿泊や農業、外食業などの幅広い職種が対応しています。一方、特定技能2号は、熟練した技能を必要とする業務に従事する外国人向けの在留資格で、建設や自動車整備等の職種が対応しています。

特定技能1号は、最大5年間就労でき、1人夜勤や服薬介助などの幅広い業務に対応できることがメリットです。

※”厚生労働省 公式HP”参照

特定技能1号の受け入れの流れ

特定技能1号は、日常会話や業務で必要となる日本語能力がある外国人が受け入れ可能です。特定技能1号の受け入れの流れは次の通りです。

1. 技能水準と日本語能力水準を試験等で確認し入国
2. 介護施設等で就労(通算5年間)
3. 帰国

※”厚生労働省 公式HP”参照

外国人介護士を雇用するメリット

外国人介護士を雇用することで人手不足が解消されるメリットがあります。ここからは、以下の外国人介護士を雇用するメリットについて詳しく解説していきます。

・人材確保による人手不足の解消
・長期間就労できる人材の確保

人材確保による人手不足の解消

急速に高齢化が進んでいる日本において介護の需要が高まる一方で、深刻な人手不足が問題となっています。日本人だけでなく外国人の介護士を雇用することによって、人材確保による人手不足が解消できます。

在留資格「介護」を有する外国人は、他の制度と比較して日本語能力が高く、専門的な知識も有しています。そのため、即戦力として採用することも可能です。

長期間就労できる人材の確保

人材確保による人手不足の解消ができるだけでなく、長期間就労できる人材を確保できるメリットもあります。

在留期間は、日本に滞在できる期間を指し、働ける期間を意味します。介護の業務に従事できる4つの在留資格は、最低でも3年間の在留期間が定められています。そのため、3年ほどの長期雇用が可能です。

また、外国人が日本で1から職探しを行うことは非常にハードルが高いため、問題がない限り同じ会社で在留期間満了まで就労する傾向にあります。

外国人介護士を雇用する問題点

外国人介護士を雇用する際は、コミュニケーションが壁となり指導に時間を要してしまうデメリットもあります。ここからは、以下の外国人介護士を雇用する問題点について解説していきます。

・指導に時間を要す
・採用時の手続きが複雑

指導に時間を要す

外国人を雇用する際に、コミュニケーションが壁となり、指導に時間がかかってしまうことが問題点となります。これは、外国人が日本に来て介護に携わる仕事をする上で、仕事を覚えることに加え、日本語の勉強も必要となるためです。

指導に時間を要してしまうようであれば、マニュアルの作成によって業務内容を覚えやすくしたり、指導方法を見直して業務に早く慣れるようにすることが望ましいと考えられます。

採用時の手続きが複雑

外国人介護を雇用する際に、雇用の手続きが複雑で手間がかかってしまうことも問題点の1つです。日本人と外国人では、雇用時の手続きが異なり、初めての場合は手間がかかります

外国人介護士を雇用する際は、在留資格の確認や手続きに必要な書類、就労の決まりなどをよく確認しましょう。

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外国人介護士を雇用しよう

外国人介護士として採用できる在留資格や雇用するメリット、雇用する際の問題点について解説しました。外国人介護士は、日本の急速な高齢化に対する介護需要への人手不足の解消に役立ちます。在留資格によっては、日本語の能力が高く、介護に関する知識を有している場合もあります。外国人介護士の雇用を検討している事業者の方は、本記事を参考に外国人介護士の雇用について検討してみてください。

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